ホーム / 衛生管理ナレッジベース / オゾン水の洗浄除菌効果を科学的に検証 – MOSTEK FLOWシリーズによるATP測定結果
衛生管理が厳しく求められる食品工場・介護施設・セントラルキッチンなどの現場では、「見えない汚れ」への対策として、より効果的で安全な洗浄・除菌技術の導入が急務となっています。
中でも注目されているのが、残留性がなく自然分解する「オゾン水」です。
しかし、除菌効果そのものは目に見えず、導入を検討する上では客観的なエビデンスが不可欠です。
本記事では、ATP拭き取り検査(キッコーマンバイオケミファ株式会社 ルミテスターSmart)を用いて、MOSTEK FLOW-01で生成されたオゾン水の洗浄・除菌効果を検証した実験結果を紹介。
一般的な水道水との比較により、オゾン水の実効性と現場導入の意義を、数値データに基づいて解説します。
食品製造現場や調理施設、介護・医療分野など、衛生管理の高度化が求められるあらゆる業種において、「洗浄と除菌の確実性」が従来以上に重視されるようになっています。
HACCPの導入が進み、作業工程の衛生状態を「再現可能かつ数値で把握できる」ことが求められる現在、従来の薬剤や洗浄剤による処理だけでは、必ずしも十分とはいえない場面も増えてきました。
このような状況の中で、オゾン水が注目を集めています。
オゾン水は、水にオゾン(O₃)を溶解させたもので、非常に高い酸化力を持ち、さまざまな細菌やウイルスに対して短時間で除菌効果を発揮します。
特に注目されているのは、その残留性のなさと環境負荷の低さです。
オゾンは分解されると酸素(O₂)になるため[1]、薬剤のように成分が残ることがなく、すすぎ工程や排水処理における負担を大きく軽減します。
また、薬剤を使用しないことによって、作業者の手荒れや刺激臭のリスクが低減されるという利点もあります。
日常的に高頻度の洗浄作業を求められる現場では、作業者の負担軽減や職場環境の改善という観点からも、オゾン水の導入は大きな意味を持ちます。
さらに、近年ではオゾン水の生成技術も進歩し、必要に応じてさまざまな濃度・流量での生成が可能になっており、用途に応じた柔軟な運用も現実的な選択肢となっています。
こうした背景から、オゾン水は「薬剤に依存しない、持続可能な衛生管理手段」として、次世代の標準的な洗浄・除菌ソリューションとして注目されています。
[1] 東京都水道局 オゾン処理について 「水に溶けたオゾンは、水中の有機物を分解する反応に使われたり、自然に分解したりして、最終的には酸素に戻ります」
衛生管理の現場において、洗浄や除菌の「実施そのもの」だけでなく、「その効果をどう確認するか」が重視されるようになってきています。
特にHACCPの考え方に基づいた管理体制では、工程ごとの衛生状態を数値として確認し、記録に残すことが求められます[2]。
しかし、除菌の効果は目に見えるものではなく、感覚的な判断や経験則に頼るだけでは、十分な説明責任を果たすことができません。
どれだけ丁寧に洗浄したとしても、「本当に菌が除去されたのか」「清浄度にばらつきはないのか」といった疑問は常に残ります。
このような課題に対する実践的な解決手段として、多くの現場で導入が進んでいるのが、ATP拭き取り検査です。
ATP(アデノシン三リン酸)は、細菌や食品残渣などの有機物に含まれる物質で、これを専用の検査機器で検出することにより、表面の清浄度を数値化することができます。
検査結果は「RLU(Relative Light Unit)」という単位で表示され、数値が低いほど清浄度が高い、すなわち洗浄・除菌が十分に行われたと評価されます。
ATP検査の大きな利点は、その即時性と簡便さにあります。
従来のように検体を専門機関に送って培養・分析する必要はなく、現場スタッフが拭き取りから測定までを数分で完了できるため、日々の衛生状態をリアルタイムでチェックすることが可能です。
加えて、機器本体と試薬キットのコストも比較的安価で、毎日の検査運用に無理なく取り入れられる点でも非常に実用的です。
こうした理由から、ATP拭き取り検査は食品工場・飲食店・医療介護施設など、即応性が求められる多様な現場で「衛生の見える化」を実現するツールとして広く活用されています。
なお、オゾン水のように高い除菌力を持つとされる洗浄手段も、導入を検討するにあたっては、効果を数値で証明するエビデンスが不可欠です。
本記事で紹介する実験も、まさにこの観点から、オゾン水と水道水それぞれの洗浄効果をATP検査で比較・検証するものです。
[2] 厚生労働省「HACCP入門のための手引書(漬物編)」 「適切な有効塩素濃度・処理時間・温度を管理し、開始・終了時の濃度と時間を記録する」
本章では、オゾン水と水道水における洗浄・除菌効果の違いを定量的に比較するために実施した実験の概要を紹介します。
この検証は、現場で実際に使用される条件に近い環境で行うことを目的とし、流水による1分間の洗浄という極めてシンプルな工程において、洗浄前後の表面の清浄度をATP拭き取り検査(ルミテスター Smart)で評価するという手法を採用しました。
オゾン水と水道水を同一条件下で使用した場合に、洗浄・除菌効果にどの程度の差が生じるかを、数値的に測定し可視化すること。
・測定にはATP拭き取り検査機(ルミテスター Smart)を使用し、RLU値を指標として洗浄効果を評価。
・オゾン水の生成には、MOSTEK FLOW-01を使用。水道水を原料とし、電気分解により流水のままリアルタイムにオゾン水を生成。
・本実験で設定したオゾン水は、濃度0.5ppm・流量3L/分のオゾン水。
細菌混濁液に不織布を漬け込み、十分に菌・有機物が付着した状態のテスト片を用意。
不織布を取り出し、表面に付着した有機物量をルミテスターにて測定(RLU値を記録)。
測定済みの不織布を、流水状態の水道水またはオゾン水に1分間沈める。
洗浄後の不織布を再度測定し、RLU値の変化を記録。
・各条件(水道水/オゾン水)について、それぞれ5回ずつ同一手順を繰り返し実施。
・洗浄前後のRLU値を比較し、平均値と除去率(減少率)を算出することで、洗浄・除菌効果の違いを明らかにする。
このように、本実験は衛生管理の現場で再現可能な条件設定のもと、科学的かつ定量的にオゾン水の効果を検証することを目的としています。
次章では、実際の数値結果とそこから得られた考察を示します。
本章では、水道水とオゾン水による洗浄後のRLU値を比較し、それぞれの洗浄・除菌効果を定量的に検証します。
ATP拭き取り検査によって得られた客観的な数値により、洗浄液の違いによる効果の差、さらには流水洗浄そのものの意義についても明らかになりました。
以下は、水道水およびオゾン水で処理した場合のRLU値(清浄度の指標)の平均値です(5回の実測値に基づく、単位:RLU)。
測定値 (RLU) | 平均値 | 平均減少率 | |
---|---|---|---|
洗浄前 |
1回目:7098 2回目:7120 3回目:8573 4回目:10304 5回目:9668 |
8553 | – |
洗浄後:水道水 [3L/min] |
1回目:2167 2回目:2490 3回目:1725 4回目:1385 5回目:2488 |
2051 | 76% |
洗浄後:オゾン水 (0.5ppm) [3L/min] |
1回目:657 2回目:757 3回目:792 4回目:750 5回目:757 |
743 | 91.3% |
オゾン水処理では、水道水に比べて15%以上のRLU値低減が確認されました。
これは、オゾン水が持つ酸化作用により、物理的洗浄だけでは除去しきれない有機汚染物や微生物をより効果的に不活化できていることを示唆しています。
注目すべきは、水道水・オゾン水のどちらにおいても1分間流水に浸しただけで、RLU値が大幅に低下している点です。
これは、洗浄液の種類にかかわらず、「流水による洗浄そのもの」が洗浄除菌工程に置いて重要な役割を果たしていることを示しています。
水道水のみの洗浄でも約76%のRLU低減が得られており、流水という物理的手段が表面の汚れや微生物を除去するうえで効果的であることが裏づけられました。
一方で、オゾン水処理ではさらにRLU値が低下しており、流水による基本的な洗浄効果に、オゾン水の除菌力が加わることで「上乗せ効果」が得られることが明確になっています。
今回の実験は、あえて「流水に浸すだけ」という簡便な条件で行われましたが、実際の洗浄工程では、以下のような追加工程が多く存在します。
・スポンジやブラシによるこすり洗い
・高圧シャワーや回転ノズルによる加圧洗浄
・洗浄対象物の形状に応じた長時間の接触
これらの操作によって、細菌やウイルスにといった洗浄除菌対象表面とオゾン水が接触する時間・圧力・頻度がさらに増加するため、本実験以上の洗浄除菌効果が期待されるのは自然な推論といえるでしょう。
ATP検査の結果は、オゾン水の効果を定量的に裏づけるエビデンスとなるだけでなく、「流水で洗う」という基本動作そのものが衛生管理において不可欠であることを改めて示しています。
そのうえで、オゾン水を用いることで、日常的な洗浄に高い除菌性能を無理なく組み込むことが可能となります。
これは、衛生レベルを底上げしつつ、薬剤使用量や環境負荷を抑えたい現場にとって、極めて実用的な選択肢といえます。
次章では、この効果を実際の現場でどのように活用できるのか、導入メリットやMOSTEK FLOWシリーズの特長を整理します。
これまでに見てきたように、ATP測定による実験結果は、「流水そのものの物理的洗浄効果」が高い除菌効果を発揮することを裏づけていました。
汚れや細菌・ウイルスは目視できないため、衛生管理においては “目に見えないリスク” をいかに確実に除去するかが重要な課題となります。
そのうえで、流水の洗浄力を最大限に活かすためには、「水そのものの質」、すなわち洗浄液としての機能強化も不可欠です。
実験でも明らかになったように、流水に1分間浸すだけでも十分なRLU低減効果が得られます。
これは、洗浄対象に対して水流が常に新しい水を供給し、汚染物を流し続けるという物理的な洗浄プロセスが除菌にとって非常に有効かつ重要であることを示しています[3]。
したがって、オゾン水を本当に効果的に活用するには、流水状態でオゾン水を生成・供給できることが前提条件になります。
つまり、「貯め置きのオゾン水」や「一時的なバッチ処理」での対応では、流水による物理的効果とオゾンの化学的効果を同時に引き出すことは困難です。
[3] CDC (米国疾病予防管理センター)『医療施設における消毒と滅菌のためのガイドライン (2008年)』「高水準の消毒や滅菌の前には、徹底した洗浄が不可欠です。なぜなら、器具の表面に残留する無機物や有機物は、これらのプロセスの効果を妨げるからです。」
この要件を満たすために開発されたのが、電気分解方式を採用したオゾン水生成器「FLOWシリーズ」です。
【FLOWシリーズの主な特長】
・水道直結型のインライン構造により、通常の流水と同様の流れでそのままオゾン水を生成・供給
・オゾン濃度や流量を用途に応じてリアルタイムに制御可能
・溜め置きではなく “使うときに、使う量だけ” 新鮮なオゾン水を生成
・従来のような酸素ボンベや薬剤補充が不要で、維持管理も簡便
このリアルタイム生成機能によって、ブラッシング・高圧洗浄・シャワーリンスといった流水操作すべてに対し、常に効果的な濃度のオゾン水を提供することが可能になります。
FLOWシリーズは、流水の物理洗浄効果と、オゾンによる除菌効果の“両立と最大化”を現場レベルで実現するためのソリューションです。
衛生管理における洗浄効果の信頼性を高めるには、「何を洗うか」だけでなく、「どう洗うか」が重要です。
流水という本質的に強力な洗浄手段に、リアルタイム生成のオゾン水を組み合わせることで、誰がいつ行っても安定した除菌結果を得られる仕組みが現場に定着します。
MOSTEK FLOWシリーズは、まさにその仕組みを支える“現場にフィットする除菌インフラ”として、多様な業種での導入が進んでいます。
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