ホーム / 衛生管理ナレッジベース / HACCP衛生管理を “数値で維持する” 時代へ – オゾン水の除菌力と見える化の重要性
食品工場や給食センター、セントラルキッチンなど、大量調理を担う施設では、HACCP対応を前提とした衛生管理の精度と再現性がこれまで以上に重視されています。
その中で注目を集めているのが、強力な除菌力を持ちながら食品や作業者に優しい「オゾン水」です。
オゾン水は、薬剤のような残留性がなく[1]、自然分解するため環境負荷も少ないのが特長です。しかし除菌そのものは目に見えないため、「どのくらいの効果が出ているのか」「本当に衛生レベルを維持できているのか」という見えない不安が現場に残りがちです。
いま、HACCPを本質的に運用していくためには、衛生状態を数値で管理し、その状態を継続的に維持するという考え方が求められています。
除菌工程の見える化と数値化は、衛生リスクを未然に防ぐだけでなく、日々の記録・監査対応・品質保証のすべてを支える基盤となります。
本記事では、オゾン水という除菌手法の有効性と、それを数値で管理する意義について、現場目線でわかりやすく解説します。
衛生状態を守るだけでなく、維持できる仕組みをどう作るか——その第一歩として、除菌の「見える化」が今、改めて注目されています。
[1] 米国 EPA「Wastewater Technology Fact Sheet : Ozone Disinfection」 「オゾンは急速に分解するため、有害な残留物は残らない」
HACCP(ハサップ)は、食品の安全を守るために危害要因を分析し、そのリスクを科学的かつ再現可能な手順で制御するための衛生管理手法です。
日本では2021年6月から、すべての食品等事業者に対してHACCPに沿った衛生管理の導入が原則義務化されており、規模や業態を問わず、衛生管理の考え方が大きく転換されました。
中でも、食品工場や給食センター、セントラルキッチンといった大量調理・製造を担う施設では、もともと衛生基準が高く、HACCPの実践が現場運用の中核となっているケースが多く見られます。
こうした現場では、衛生工程の“根拠ある管理”を日々どう維持・記録するかが、大きな課題となっています。
HACCPの本質は、「なんとなくきれいにしている」では通用しない、という点にあります。
たとえば洗浄・除菌の工程ひとつをとっても、「誰が・どの洗浄剤を・どれだけの濃度で・どのように処理したか」を定量的に管理・記録できなければ、再現性も説明責任も担保できません。
つまり、衛生管理は感覚から数値へというシフトが求められているのです。
特に問題となるのが、除菌工程の“見えなさ”です。洗浄後に汚れが取れたかどうかは視覚的に判断できますが、除菌の効果は目に見えません。
そのため、除菌力を数値で確認できない方法や機器では、いくら現場がしっかり運用していても、監査時に「証明できない」リスクが残ってしまいます。
HACCPにおいては、「どの濃度の除菌液を使って、どれくらいの時間処理したか」を明示することが推奨されています[2]。
逆にいえば、濃度のばらつきや、工程の不統一があると、HACCP手順としては不十分とされる可能性があるのです。
現場の責任者が自信をもって「このやり方でリスクを管理している」と言えるためには、数値による裏付けが必要です。
衛生管理の“見える化”とは、安心・安全を数字で語れる状態をつくることに他なりません。
[2] 厚生労働省「HACCP入門のための手引書(漬物編)」 「適切な有効塩素濃度・処理時間・温度を管理し、開始・終了時の濃度と時間を記録する」
洗浄・除菌工程で使用される薬剤にはさまざまな種類がありますが、近年、食品関連施設で急速に注目を集めているのがオゾン水です。
その理由は、高い除菌力を持ちながら、食品や作業者、環境への負荷が少ないという特長にあります。
オゾン(O₃)は酸化力が非常に高く[3]、細菌・ウイルス・カビなど幅広い微生物に対して効果を発揮します。除菌メカニズムとしては、細胞膜を酸化的に破壊することで、短時間かつ確実な不活化が可能となります。
この作用は、次亜塩素酸やアルコールと同様に、即効性や幅広い微生物への効果が期待でき、耐性菌の問題も起こりにくい[4]とされています。
さらにオゾンの最大の特長は、使用後に自然分解して酸素(O₂)に戻ることです。
つまり、除菌後に残留物を一切残さないため、食品に直接触れる場面でも安全性が高く、すすぎの必要もありません。
これはHACCPの観点から見ても、「二次汚染リスクを限りなくゼロに近づける手法」として理にかなっています。
また、アルコールや塩素系薬剤に比べて刺激臭や作業者の肌への刺激が極めて少ないため、現場での作業負担も軽減されます。
薬剤管理の手間や希釈ミスの心配もなく、労働安全面から見ても導入メリットは大きいと言えるでしょう。
オゾン水は、強力・安全・環境負荷ゼロという、従来の薬剤では両立が難しかった要素を兼ね備えた新たな選択肢です。
しかし、これほど優れた特性を持つオゾン水であっても、適切に管理されていなければ、十分な効果が発揮されないという課題が存在します。
次章では、その課題となる「濃度管理」と「見える化」の重要性について詳しく解説していきます。
[3] 米国 EPA「Wastewater Technology Fact Sheet : Ozone Disinfection」 「オゾンは非常に強力な酸化剤であり、ウイルスを無力化する作用があります。」
[4] 日本歯科大学 「オゾンジェルの口腔内細菌に対する効果ならびにヒト歯肉及びヒト歯根膜線維芽細胞への影響」 「オゾンは、発生したOHラジカルの酸化還元反応により殺菌作用が起こるため、耐性菌が発生しにくいと考えられている」
除菌という行為は、目に見えません。
洗浄後に目視で「きれいになった」と判断できても、除菌効果の有無や十分性を視覚で確認することはできないため、現場では常に「本当に効果が出ているのか」という不安がつきまといます。
この「見えない不安」を解消するために求められるのが、除菌力の見える化です。
特にオゾン水のように、その場で生成して使用する除菌水は、生成された瞬間の濃度(ppm)と使用時点での濃度が異なる場合があります。
なぜなら、オゾンは時間の経過とともに自然分解してしまう性質があるからです。
したがって、除菌力の安定性を担保するには、「何ppmのオゾン水が、どの工程で使用されているか」をリアルタイムかつ定量的に把握・記録できる仕組みが不可欠となります。
この「ppm管理」が行えるかどうかで、現場の衛生管理レベルは大きく変わります。
導入した装置が生成中のオゾン水濃度を表示できなかったり、経年劣化でオゾン濃度が低下していたりすれば、“除菌しているつもり”でも実際には除菌力が不足しているという事態が起こり得ます。
HACCPの考え方では、各工程における衛生管理の実施状況を記録し、必要に応じて見直しを行うことが求められています。
厚生労働省が公開している「HACCPの考え方に基づく衛生管理のための手引書」では、衛生管理のルールを実践し、必要な場合は記録を残すことが示されています。
つまり、“除菌の見える化”とは単に便利な機能ではなく、HACCP実践のための基盤技術といえるのです。
オゾン水は、生成時には高い除菌力を発揮しますが、オゾン分子は非常に不安定で自然分解しやすいという性質を持っています。
このため、生成後の取り扱いや時間経過、周囲環境(水温・有機物の存在など)によって、オゾン水の濃度は容易に変動してしまいます。
仮に、オゾン水を使った洗浄・除菌工程が設定されていたとしても、使用時のオゾン水濃度が想定より低いと、十分な除菌効果は得られません。
つまり、「除菌水を使ったから安心」ではなく、「想定濃度で使用できたかどうか」が本当のリスク管理上のポイントとなるのです。
さらに、オゾン水生成器そのものも、電極表面のスケール堆積やオゾン生成電極の経年劣化等により、生成できるオゾン水濃度が徐々に低下していくリスクがあります。
もし生成中のオゾン水濃度が知らされない、あるいはリアルタイムで把握できない装置を使用している場合、現場ではオゾン水濃度の低下や異常に気づかないまま運用を続けてしまう可能性があります。
こうした濃度ばらつきや装置劣化によるリスクは、単に現場の「感覚」や「経験」に頼るだけでは防ぎきれません。
常に一定濃度のオゾン水を生成し、数値で確認できる仕組みを持つことが、衛生水準を安定して維持するための絶対条件となるのです。
HACCPの視点でも、除菌工程における管理基準(生成中のオゾン水濃度や処理時間)を設定し、それを記録・モニタリングしていくことは、工程管理の信頼性を高めるために欠かせません。
このように、使用時のオゾン水濃度ばらつきを極小化する体制づくりが、安定した衛生水準の維持と、現場の信頼性向上に直結します。
オゾン水の導入は、除菌工程の精度向上だけでなく、現場作業の効率化と作業者の安全性向上にも大きな効果をもたらします。
従来の薬剤洗浄では、薬剤の計量・希釈・保管・廃棄といった管理作業が不可欠でした。
これらの作業は、単なる手間にとどまらず、希釈ミスや薬剤残留によるリスクを伴います
特に次亜塩素酸など強力な薬剤を扱う場合、作業者には手袋やゴーグルといった防護具の着用が求められ、作業負担も無視できませんでした。
一方で、オゾン水は水道水と電源さえあればその場で生成でき、希釈や薬品保管が不要です。
生成されたオゾン水は使用後に自然分解して酸素に戻る[5]ため、排水処理に特別な対応を必要とせず、作業後の手間も最小限に抑えられます。
これにより、作業手順の簡略化、洗浄準備の時間短縮、作業者の負担軽減を同時に実現できます。
さらに、高濃度のオゾン水であれば、短時間で効果的な除菌が可能なため、洗浄作業そのものの所要時間も短縮できます。
たとえば、調理器具の洗浄や床面清掃の工程において作業時間が短縮されれば、従業員の残業時間も抑制されます。
また、薬剤の取り扱いに伴う作業者の健康リスクも大幅に低減されるため、労働安全対策の一環としても、オゾン水の導入は有効です。
このように、オゾン水は除菌効果だけでなく、現場作業の効率性、安全性、労務負担の軽減といった多方面にわたるメリットをもたらします。
衛生管理のレベルアップと業務効率化を同時に実現するソリューションとして、今後さらに普及が進んでいくと考えられます。
[5] 米国 EPA「Wastewater Technology Fact Sheet : Ozone Disinfection」 “Ozone is generated onsite because it is unstable and decomposes to elemental oxygen in a short amount of time …”
オゾン水は、強力な除菌力と高い安全性を兼ね備えた理想的な衛生管理手段です。
しかし、オゾン水を衛生管理体制の中心に据えるのであれば、単にオゾン水を「使う」だけでは不十分です。
「生成中のオゾン水濃度を把握・管理できるか」という視点が、今後ますます重要になっていきます。
なぜなら、生成されたオゾン水の除菌力は時間や環境によって変動し、また生成装置自体も経年による性能劣化リスクを抱えているからです。
このリスクを見過ごせば、HACCP対応をはじめとする衛生管理基準を満たせないばかりか、現場の衛生水準そのものが知らないうちに低下する恐れがあります。
これからの現場に求められるのは、除菌効果を「見える化」し、常に一定水準を維持できるオゾン水生成器です。
具体的には、以下のような機能・設計が装置選びの重要なポイントとなります。
・生成中のオゾン水濃度をリアルタイムで把握・管理できること
・センサーの異常値等、装置異常を自動で検知・警告できる機能があること
・長期間にわたって安定した性能を維持できる設計(電極の自動クリーニング機能、部品定期交換など)
これらの条件を満たすことで、オゾン水による除菌工程が単なる「導入メリット」ではなく、衛生管理体制の根幹を支える武器になります。
たとえば、当社がご提案する「オゾン水生成器 FLOWシリーズ」は、これらの要件を満たす次世代型のオゾン水生成器です。
生成中のオゾン水濃度をリアルタイムで表示し、電極の自動クリーニング機能を搭載しているのでスケールの堆積によるオゾン水濃度低下の心配がありません。
また、年に1度の契約更新時に電極ユニットの交換を行うので、オゾン水生成電極の経年劣化を気にする必要もありません。
導入後も安定した除菌力を持つオゾン水の供給を実現し、現場の負担を大幅に軽減します。
衛生管理は、感覚ではなく、数値で維持する時代へ。
オゾン水とその“見える化”管理を取り入れることが、これからの食品現場に求められる新たなスタンダード[6]となるでしょう。
[6] 厚生労働省/日本ミネラルウォーター協会 「清涼飲料水(ミネラルウォーター類)製造における「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の手引書」 「オゾン殺菌では、オゾン濃度と処理時間 を管理基準(CL)として設定し、モニタリングを行うこと」
食品工場や大量調理施設では、科学的根拠と再現性に基づいた衛生管理が、これまで以上に求められています。
オゾン水を活用し、その除菌力を数値で可視化することは、日々の衛生レベルを確実に維持し、監査や品質保証の信頼性を飛躍的に高める大きな力となります。
HACCPに求められる衛生管理を確実に実践し、製品の安全と品質を守るために。
MOSTEKは、その確かな衛生管理の実現をサポートします。
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